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調理の科学
はじめに:
「ゆでる」「煮る」「炊く」「蒸す」「揚げる」「焼く」と私達日本人は、さまざまな加熱方法を使って、昔から四季折々の素材を美味しく調理して来ました。
そして、美味しく調理する方法には、「コツ」があると言われますが、実は、それらの方法には、全てに科学的な根拠があるのです。
それは、具体的には、食品素材の選択、保管に始まり、下処理、裁断、加熱、配膳というプロセスを通
る訳ですが、ここでは、冒頭に上げました通り、加熱に関する解説から機器を絡めてお話ししたいと思います。
1.「加熱」という行為の意味:
私達は、多くの場合、様々な食品に熱を通して食べます。一体どういう目的の為に加熱するのでしょうか?以下にまとめてみます。
食品の持つ栄養素と切っても切れないお話になりますよ。
1.食味・食感を上げる。
- −1.軟らかく!:
炭水化物の中でもデンプン質は、植物系に多く含まれるもので貯蔵デンプンと呼ばれ、高い密度で組み合わさった状態になっています。
貯蔵デンプンというとピンと来ないかも知れませんが、種子(米・麦・大豆・小豆)や、根(ジャガイモ・サツマイモ)、地下茎(タマネギ・サトイモ)の状態になっています。
たとえば大豆・米など、そのままでは水分の含有量が20%以下なので、食べても硬くて美味しくないどころか、消化吸収が出来ずにお腹を壊してしまいます。
こうした貯蔵デンプンの場合、加熱は、水を使うことによる「湿熱式加熱」が多くの場合有効です。つまり、水と熱を加えてデンプンの粒子の鎖を解きほぐして軟らかく食べやすくするという目的でおこなわれるのです。
- −2.歯切れ良く!:
今度はタンパク質の話になりますね。タンパク質の多いもの、特に肉。馬肉や鶏肉など、生で食べる場合もありますが、ほとんどは加熱して食べる事が日常的です。
生のままで食べる肉は、歯切れが悪く、咀嚼(噛む事)するだけで疲れてしまうくらいです。
そこで、加熱するのですが、ご存知の様にタンパク質には熱を加えられると凝固する性質がありますので、熱によって固くなり、歯切れが良くなり、食べやすくなるのです。
- −3.甘く!:
これも米のデンプン質のお話になりますが、米を構成するデンプンの粒子は、加熱される前には、ミセル構造と呼ばれる密度の高い結晶構造を作っていまして、この状態をβデンプンと言います。
βデンプンの状態は、人間の体内の消化酵素に対して反応し難く、食べると消化不良で、お腹を壊してしまう。
で、このβデンプンに熱エネルギーを持った水分を加えるミセル構造が崩れてと膨潤(簡単にいうとフヤけた状態)し、αデンプンになります。(α化とか糊化ともいいますね。)
αデンプンは、唾液に含まれる消化酵素に反応しやすくなり、甘み(糖化)が感じられる様になるのです。
デンプンに甘みが出てくるカラクリ、これも加熱の目的の重要なものの一つです。
2.食品の持つ栄養素を消化吸収しやすい様にする。
- −1.デンプンの場合:
基本的に生の状態のデンプン(βデンプン)はほとんど消化されません。
その理由は、やはりミセル構造という密度の高いデンプンの結晶体が構築されているからです。甘く!のパートでも触れましたが、熱エネルギーを持った水によって初めてαデンプンとなり、人間の体内にある消化酵素によって分解されやすくなる、つまり、消化吸収されやすくなるのです。
- −2.タンパク質の場合:
熱によるタンパク質の凝固は、栄養素の吸収という点よりも、むしろ咀嚼(噛むこと)によって細かく砕きやすくなるということで消化吸収を助けるという意味があります。
生の状態のタンパク質は、弾力性に富み、咀嚼には困難な条件を備えているのです。
3.香りを上げる。
4.見た目を美しくする。(色、焦げ目によっての質感アップ)
5.有害な微生物を殺す。(食中毒の要因となる微生物を殺す)
「美味しさ」の秘密:加熱は最低限度で良い! 香りは美味しさの60%を決めると言われております。よって、100℃で沸騰させたまま20分以上もの加熱を続けたり、材料が縮んで焦げてしまうまで焼きますと、調理室中にプーンと美味しい香りは広がりますが、それは部屋だけを美味しくしているのであって、材料からは、どんどん美味しい香りが逃げている状態を作り出しているのです。
つまり、加熱は最低限度で良いのです。
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