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「炊飯」湿熱式加熱(加熱温度帯:100℃〜135℃)

お米を「炊く」という行為は、「煮る」よりも、複雑な段階を経る、日本独特の調理方法です。
そこには、「洗う」⇒「浸す」⇒「ゆでる」⇒「煮る」⇒「煮詰める」⇒「煎る」⇒「蒸す」⇒「ほぐす」という段階が存在し、それらの全てを含めたものを「炊く」と言うのです。
しかも、この中のどれが欠けても美味しいご飯にはなりません。
米は、植物における貯蔵デンプンの中でも、もっとも密度の高い結晶体(ミセル構造)を持ったβデンプンで、それら一つ一つが硬く結びつきあっておりますので、そのまま食べてもほとんど消化吸収されません。つまりは、そのβデンプンの結びつきを水と熱の力で解き放ち、消化吸収しやすいα化デンプンにする為に「炊く」という行為があるのです。

現在は、炊飯機器の進歩により、その最も難しい「ゆでる」⇒「煮る」⇒「煮詰める」⇒「煎る」⇒「蒸す」の部分は、簡単に行なえる様になっています。
特にマイクロコンピューターを内蔵したマイコン式炊飯器の場合では、それぞれの加熱段階について最高の条件をそろえた温度管理プログラムがマイコンによって実行されますので、かなりレベルの高い炊飯が簡単に行なえます。

各段階のポイントを解説しましょう。

「洗う」:
お米はよく「研ぐ(とぐ)」と言われますが、これは、精米機の性能が悪く、精製してもお米の表面 に籾殻の滓が付着していた頃のやりかたです。この頃は、お米同士を手で押さえつけて水の中でゴシゴシと擦り合わせ、籾殻の滓を取り除く必要がありました。
でも、現在は、精米機の性能も上がり、お米の表面には籾殻の残滓などは無く、糠が付着している状態です。ですから、糠を取り除くには米をゴシゴシと擦り合わせる必要は無いのです。
むしろ、柔らかくムラなくかき混ぜる事が大切なのです。ゴシゴシ擦り合わせますと、米の表皮に傷がついたり米が割れたりし、炊いた時に粒の潰れたベタついたご飯になってしまいます。

よって、理想的なお米の洗い方は

一回目:
たっぷりの水をボールに貯めておいてお米を投入(この瞬間に水面にフワァ〜っと糠が浮いて広がります)、すばやく2〜3回まんべんなくしっかりかき回したらすぐに水を捨てます。お米は、水に漬けられると最初の2分くらいの間に急速に水を吸収しますので、一回目の洗い水に長く漬けておくと水分と一緒に糠を吸い込んでします。そうなるといくら洗っても、お米から糠臭い匂いが取れなくなってしまうのです。
また、水道水を直接に米に当てるのは、良い方法ではありません。これをやりますと、糠が米から離れて浮き難くなるばかりでなく、水道水に含まれる塩素臭を吸い込んでしまう結果 にもなります。
糠の浮いている水は出来るだけ早く捨てる!これが一回目の洗米のポイントです。

二回目:
別のボールに取っておいたたっぷりの水を投入、なぜそうするか?といいますと水道水の蛇口から水を直接当てますと、塩素臭がお米に付着してしまうからです。お米の吸水は続いています。
一回目と同じように、手早くまんべんなく(下の層を上に持ってくる様に)しっかり2〜3回かき回し、水を捨てます。

三回目〜四回目:
やはり別のボールからたっぷりの水を入れて3〜5回まんべんなくかき回します。この頃になると洗い水が少し澄んできます。ここが洗米の大切なポイントで、完全に水を澄ませようとこれ以上水を替えて洗っても、今度はお米からデンプンが流れ出し始めて再び水は白く濁ってきます。最初に洗い水が澄んで来た時、それが洗米終了の重要なポイントです。
ザルに上げて水を切っておきましょう。

「浸す(浸漬)」:
米は、洗った後、今度は水に浸しておかなければなりません。米の貯蔵デンプンの結晶体(ミセル構造)を加熱によってゲル状態(α化)にする為には、事前に精米に対して重量 比で約30%近くまで水を吸水させる必要があるのです。逆に、この吸水が不十分なまま加熱しますと、米粒の表面 のデンプンだけがゲル化して、米粒の中心部への吸水や熱の伝わりも遅くなりますので、芯のあるご飯になってしまいます。
ここで、難しいのが、米を浸す水の量です。
重量比で米の1.1倍〜1.35倍くらいが良いのですが、この幅の中で、米の質や鮮度、そして一度に炊く量 によっても調整が必要なのです。
大雑把な表現ですが米が古かったり炊く量(升単位)が多かったりする場合には1.35倍に近いレベルで、逆に米が新しかったり炊く量 が少なかったりする場合には1.1倍に近いレベルで水の量を決定して下さい。
炊飯器の内釜には、通常目盛りが打ってありますが、本当に美味しいご飯を炊きたかったら重量 比で水の量を決定して下さい。

米の吸水時間は、水温と関係があります。
米は、浸される水温が高ければ高いほど、短時間で吸水し、逆に水温が低ければ低いほど吸水に長時間かかるのです。
冬場は60分〜90分、夏場は、約30分くらいが適当です。
浸漬時間は、しっかり守りましょう。長ければ良いだろうと放置しますと、米の表皮がふやけて炊き崩れのもとになりますし、夏場では雑菌が繁殖して臭いが出てしまいます。
ですから、浸漬時間が終了したら、速やかに炊飯器にセットして加熱を行ないます。

炊飯加熱の四段階:

「ゆでる」:
たっぷりの水分が熱によって盛んに米の間を対流し、米が「ゆで」られている状態です。この段階では、沸騰温度(100℃)まで出来るだけ早く到達させる事が大切です。

「煮る」:
水分は、米への吸水と蒸発によって減少しますが、沸騰は維持されており、米の層を抜ける水分の通 り道が形成されてきています。米は、吸水によって膨満が進み、体積が2倍近くになっています。

「煮詰める」:
水分は米の層より下に溜まって沸騰している状態で、「煮る」段階で形成された米の層を抜ける水分の通 り道からは、盛んに泡や蒸気が抜けています。水分はさらに減少して行きます。

「煎る」:
内釜の底の水分が全て蒸発し、釜底に接している米が香ばしい香りを発し、薄いキツネ色に変わる直前の状態です。この瞬間で火を止めます。
(炊飯器を使わないで鍋や釜で炊飯する場合、この段階を目視で捉えて火を止める判断をしなければなりません。そのポイントは蓋の間から盛んに漏れていた蒸気が途切れた時です。)

「蒸す」:
米は、以上の様に加熱を行い、火を止めても実はまだ粒の中心部までテンプンのα化は充分に進行しておりません。ですから、蓋を取って蒸気を逃がしてしまってはいけません。このままの状態で、15分〜20分くらいの時間、「蒸す」必要があります。
米の間に残っている蒸気で「蒸す」ことによって米粒の膨満と中心部のデンプンのα化は完了し、ご飯となるのです。

「ほぐす」
「蒸す」ことまで完了したご飯の間には、実は余分な蒸気が残っています。この蒸気をこのまま残しておきますと、温度が下がって行くに従って水滴に戻り、ご飯がベタベタになってしまいます。これを「釜帰り」と言います。
この「釜帰り」を防ぐ為、「蒸す」ことの終了したご飯は速やかにほぐして蒸気を逃がしてやる必要があります。
ほぐし方は、先ず、ご飯の層に中心から四方に、しゃもじで縦に切り込みを入れてご飯の塊を掘り起こし、次にその塊を切る様に細かくして行きます。大切なのは、極力ご飯の粒をつぶさない様に行なうことです。
これでで、ご飯の粒の間に残った余分な蒸気が飛ばされます。
吸湿性の良い、木のおひつなどに入れておけば、ご飯が冷えてしまってもベタベタすることがありません。


以上が、炊飯の全ての段階です。

 
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